先日のApple社CEO、Jobsによる基調講演の模様がiTunesのPodcastで公開されている。
動画による配信で、1時間40分以上(1.2GB以上!)のもの。
早速iTunesでダウンロードして見てみる。
これ、プレゼンとしては最高級に素晴らしい。
ということで、今日は久しぶりに「スキル」というカテゴリで「プレゼン技法」について書いてみる。
プレゼンテーションの目的は、とにかく相手に「伝える」という事に他ならない。
こちらの思いを100%に出来るだけ近い値で伝えたい。
100%伝わるという事は完全にあり得ない。
何故なら、コミュニケーションには「相手に発信する能力」がどんなに高くても、(失礼ながら)「相手が受信する能力」が低ければ、相手に伝わる部分というものは落ちるから。
だから、「相手が受信する能力」に依存しないモノを発信すればいいんである。
なので、プレゼンテーションにおいては次の事に注意しなくてはならない。
・プレゼンを行うターゲットがどんな人なのか
・自分が最低限伝えなくてはいけない事はなんなのか
プレゼンを行うターゲットが、例えばまだ社会人になりたての人であれば、業界の用語をバリバリ入れちゃいけないだろうし、むしろその用語の解説なんかも入れなくてはいけないだろう。
でも同じ内容を「この道30年のベテラン!」っていう人が聞いたら「そんな分かりきった事なんで俺の前で言いやがる!」ってなる(最初からもう「聞いてなんかやらねーよ」という空気)。
自分が最低限伝えなくてはいけない事を明確にしておかないと、あれもこれも大事だから、と詰め込みすぎて、結局「あなたは何が言いたかったの?」と論点がぼやけまくる。
まぁ他にもいろいろあるんだけれど、まずこの2点についてはプレゼンのシナリオを考える時には最低限注意しなくてはならない。
相手の受信能力の予測をつけて、発信側の重要センテンスを出来るだけ1つに集約させる事で相手に確実にこちらの言っている事を理解してもらうためだ。
で、実際のシナリオ作成なんだけれど、2つにやり方が分かれる。
(1)必要最小限の情報だけを画面や資料に映し出し、演出で売り込む
(2)話す事からなにから全てを画面や資料に映し出し、全てを読む
(1)はJobsのやり方のようなもの。
売り込みたい製品などを、資料や画面で「ビジュアル」を使い、うまくストーリーの流れに載せて、見ている人を「ワールド」に引き込むやり方。
文書なんてもっての他、とにかくビジュアル重視。
画面にはビジュアル、自分の声でその説明。
芝居がかった、というと聞こえは悪いが、演出を駆使する事で相手も確実に「キーワード」だけを頭にインプット出来る。
私は英語ほとんどダメなんだけれど、わくわくしながら本当に楽しみながら見る事が出来た。
そして「あぁ、iPhone、欲しい!!」と心から思った。
ぱっと見ると(2)はプレゼンの常識から言うと「ダメ」そうなのだが、実はそんな事はなく、後で見返してみても全てが載っている(つまり載っていないことは話していない)わけだから、顧客側の意思決定者にとっては「有益な資料」となる。
何しろ、プレゼン翌日になっても、その資料を見れば全てが載っているわけだから、プレゼンされた人も意思決定時にはいくらでも参考に出来るわけだ。
とにかく一番ダメなのは「中途半端」だ。
(1)のやり方を徹底出来ない場合。
文章(2行を超える文章)が画面に映し出されるだけで、読む気が失せる。
なまじビジュアル重視な分、文章が(本当は短くても)長く感じられてしまうから。
Jobsのやり方は、文章ですら「ビジュアル」のように見せる点において、本当に素晴らしい。
呪文のように、少ないセンテンスで勝負しているのがよくわかる。
(2)に関しては「載っている事と話す事が完全一致」しているという点で、半端ではない。
完全一致しているからこそ、残した資料が意味を持つ。
資料に載っていない事は補足で説明したとしても必ず文書化して渡さなくてはならない。
なにしろこのやり方の強みは「全ての情報が明示化されている」事なのだから。
(1)と(2)に共通していえるのは「綿密な準備をしている」点。
この点においても中途半端では無いのだ。
どちらのやり方も第一級のプレゼン技法だと思う。
ここまで出来たら、後は練習。
プレゼンはとにかく「出来るだけ人前で練習をする」事が大事。
脳内練習は、勝手にいろんな事を脳が補完してくれるのであんまりよろしくない。
私は職場で以前「プレゼン技法」の講師をつとめた事があるんだけれど(笑)、そこで受講生に言ったのは「プレゼンは才能ではない」という事。
しゃべりが上手い人ほど、プレゼンで失敗するという例は本当に数多くある。
「ま、最後は俺のしゃべりでフォローするよ」という、その場しのぎの対応は、往々にしてどの分野でもまず失敗する可能性が高い。
メッキがはがれるからだ(自分の事だったりする)。
しゃべりが下手で、自信の無い人ほどプレゼンは上手く行く可能性が高い。
よく練習するし、よく準備するし、いい意味で「XXって言われたらどうしよう・・・」と考えておけるから(最悪の状況を想定出来る)。
ま、こんな駄文をだらだら書いてる時点で「本当におめーは講師なんかやってたのか?」と疑われそうだけれど(笑)。
あ、だからもう私に「プレゼン技法」の講師の話が来ないのかぁ(苦笑)。
プレゼン苦手だなぁ、とかいう方、ちょっとだけ上記の事を気にしてみてはいかが?