2009年04月22日

MTTによる「マーラーの交響曲第3番」がすごすぎる

マイケル・ティルソン・トーマス(以下MTT)という指揮者について。
youtubeシンフォニーオーケストラを指揮していたのを見て、久しぶりに聴きたくなったんです。

彼は録音の数が少ない気がしているのですが、とてもとても素晴らしい指揮者です。
個人的に「あまり誰にも言わずに一人でこっそり楽しむ」CDというのがあって(笑)、それが彼がサンフランシスコ交響楽団と録音したストラヴィンスキーなんですよ。
春の祭典、火の鳥、ペルセフォネが入った3枚組のCDは、「完璧」という言葉がぴったりな凄まじい演奏。
春の祭典に関しては音色的な好みなんかもあっていろんな盤を推す人が多く、私なんかも対外的にはカンブルランとかブーレーズ(旧盤)なんかを推すわけですが、実はこの「春の祭典」がおそらくもっとも凄い演奏な気がしています。

で、彼らがマーラーの交響曲を連続して録音しているのは知っていたのですが、金額が高いのと、アバドのマーラーやラトルのマーラーばかり聴いていたというのもあって、食指が全く動きませんでした。
ただ、iTunes Music StoreではCDを購入するよりもずっと安い金額でMTTのマーラーを買える、という事で、まず一曲買ってみようかな、と。

選んだのはマーラーの交響曲第3番。

私はこのマーラーの交響曲第3番というのがマーラーの交響曲中でもっとも思い入れの強い曲です。
というのは、初めて聞いたマーラーがこれだったから。
NHK教育で昔バーンスタインによるマーラーの交響曲演奏が放送されてまして、そこで見た3番の交響曲が初体験。
マーラーは難しい、とか長い、という印象を持っていて、実際難しいし長い(笑)のですが、当時中学生だった私は飽きもせずにじっくり見ていました。
ビデオに録画して何度も見たなぁ。

バーンスタインの指揮も素晴らしかったですし、ウィーンフィルの演奏も素晴らしかったのですが、なによりもこの曲に圧倒されました。
冒頭のホルンによる序奏にやられ、トロンボーンのソロにやられ、1楽章中盤でオケがぐるんぐるん振り回される(バーンスタインに、というよりも「曲に」)様相、2楽章の牧歌的なオーボエソロ、3楽章のリズム、4楽章のけだるい空気、5楽章の少年合唱による「ビム、バム」で始まるリズムに乗った天上の雰囲気、そして息の長いフレーズによって奏でられる世界。
なんというか、世の中にあるものをみんなこの交響曲の中に突っ込んでミックスした、そんな感じでした。
(実際「自然」をテーマにしていて、マーラー自身がワルターに「もう自然を見る必要はないよ、私が全部曲にしてしまったからね」と言ったとか)

当時田舎(今もだけど)に住んでいた私は、この曲のCDなんぞ売っていないわけで、ただただこの曲に対するあこがれだけが増していきました。
そうこうしているうちに、他のマーラーの交響曲を聴くようになっていき、3番をあまり聴かなくなりました。


その後、社会人になってから3番をまた聴くようになりまして・・・
・アバド/ベルリン
・小澤/ボストン
・ハイティンク/ベルリン
・ケント・ナガノ/ベルリン・ドイツ響
・ラトル/バーミンガム
といった辺りが我が家に並んでおります。

この曲って、オケの性能を如実に表してしまうのだと思っています。
下手なオケでこの曲を演奏されたら、聴いている方は拷問でしょう。
その上、指揮者の音楽性も白日の元にさらけだしてしまう。
まさに音の洪水のようにさまざまなパッセージが入り乱れるこの曲を、ただただ交通整理するだけでは最終楽章の「歌」に結びつかないという恐ろしさ。
(ここが7番に対するアプローチと大きく異なると思う)




さて、今回MTT指揮サンフランシスコ交響楽団によるマーラーの交響曲第3番を実際に購入し、聴いてみました。

・・・

・・・

・・・


凄い。

まずスコアに書かれている音の再現、という意味において、これ以上は求められないでしょう。
完璧、という言葉を口にしたくなってしまいます。
そして何よりすごいのが、楽譜に書かれている音(点)をつなぐ線の存在。
イントネーションやフレージングが恐ろしいほど統一されていて、それがおしつけではなくて奏者の自発性によって高度なレベルで結実しているのです。

この演奏を聴いてしまってから他の演奏を聴くと「なんて詰めの甘い演奏なんだろう」と思わず言いたくなってしまう。
なんなんだこのコンビは。

細かく細かくリハーサルを繰り返し、ガチガチに作りあげるというような、半ば強制力を感じる演奏とは違います。
本当に奏者の呼吸が「世界観にマッチしている」とでもいいましょうか・・・。
参ってしまいました。
ミクロ(細部)もマクロ(曲の大きな構造)も全くおろそかにせず、それが自然な呼吸の中で行われているという、本当に恐ろしい演奏。
こういう演奏はともすれば「息がつまりそうな」響きに支配されるのですが、そういう事もない・・・なんだろう、余裕すら感じる演奏です。


それにしても、MTTのスコアの読みとその耳、そして音楽性には脱帽です。
一朝一夕で作り上げられるものではない演奏というのはわかりますが、それだけではないでしょう。
練りに練り上げられた演奏。
それらが「思いつき」や「ひらめき」といったたぐいのものではなく、確信をもって迫ってきます。



一聴して、私はこのコンビの大ファンになってしまいました。
少なくともマーラーはこれから集めてみる予定です。
posted by ぎじん at 12:42| 岩手 ☔| Comment(0) | TrackBack(1) | CD評等 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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