今週土曜日の夜にベトプロの今年初練習があります。
毎度の事ですが、ベトプロの練習のあたりって雪がよく降る。
まあそういう時期にやるのが悪いんだけど。
シンフォニーのスコアを読む事が多かったんで、今年に入ってからは皇帝のスコアをなるだけ読むようにしてるんですが、いやあこの曲はスコア読んでるだけでワクワクしてきますね!
カッコイイ!!
四番ではピアノが序奏としてあくまでしっとりと歌ってからオケの序奏に渡すのですが、皇帝はまずオケが高らかに格調高くEs-durを鳴り響かせて、ピアノのアルペジオにつなぎ、その応酬があってからようやくオケの序奏になるわけで、もうここだけで「い、一体何が待っているんだろう!?」と思わされます。
でもってこのオケの序奏が物凄いテンションなわけです。
だからといって狂喜乱舞するわけじゃなく、あくまで格調高いのがミソ。
皇帝、ってのは別にベートーヴェンがつけたわけじゃないんですが、そう呼ばれるのも分かるなあ、と思わされます。
少なくとも「運命」よりは素晴らしいネーミング。
私は運命っていう表題が、ベートーヴェンに対する日本人の印象を決定付けたと思っていて、良し悪しは別にしてそろそろベートーヴェンに対するイメージを一度まっさらにする必要があると考えています。
というか、むしろそういうことを最初の目的としてこの「ベートーヴェン・プロジェクト」を立ち上げたんですけどね。
自分は幼いころからワルターという指揮者が指揮した「運命」を聴いて育っていて、ベートーヴェンってこういう曲なんだなぁ(遅くて怖い、そんな印象でした)と思っていたのに、同じベートーヴェンの「第九」をミュンシュという指揮者が振っているレコードで聴いて「こんな激しい作曲家だったの???」(mf以上のダイナミクスでとにかく速くて迫力満点の演奏でした)と驚いた記憶があります。
いろんな曲を聴いていくうちに、果たしてベートーヴェンっていうのは「どういう演奏が正しいんだ?」という、今にして考えればあまり意味のない(笑)事で悩んだりしたものです。
ちょうど2000年前後に、ベートーヴェンの楽譜の新しい校訂版として「ベーレンライター版」というものが出始めてきました。
確か最初に聴いたのはガーディナーという指揮者による演奏だった気がするんですが、それを聴いて私はすっかりぶっ飛んでしまいました。
なんなんだこの演奏は!!!!
しかし、手持ちのスコアを見ながら聴いてみてびっくり。
多少楽譜が違うようにはなってますけれど、実は楽譜に書かれているように演奏すれば、旧版でも似たような演奏になるように出来ているのです。
つまりよくよく見てみれば、スコアに書かれている情報だけを頼りに、過去の数々の演奏にとらわれずに聴いてみれば、今の演奏というのは指揮者の主観がたーーっぷり入ってしまっていた、ある意味では「デフォルメされた」演奏である事がわかったのです。
このデフォルメの作業自体が悪いとは言いませんし、私はむしろこのデフォルメされた演奏の方が好きだったりします(笑)。
そもそもデフォルメといっても、それは必ずしも指揮者の主観だけではありません。
オーケストラの編成が大きくなった事。
作曲された当時よりも残響の長いたくさんの客席が存在するコンサートホールが増えた事。
そして何よりも、二度の世界大戦という時代の流れ。
こうしたものが演奏者、聴き手の両者双方が望む形で、デフォルメされていったわけです。
だから、時代の趨勢とともに「そもそもあの当時はどういう演奏をされたの?」という響きに触れたくなる、という気持ちが生まれるのも、ある意味では当然でして。
古楽器による演奏が見事にそれにこたえてくれました。
(ただしあれも「推測」の域を出ていないということは、決して忘れてはいけない事です。あれが「正統」であるなんて当時生きていた人がいない以上、誰にも証明できないわけですから)
こうした古楽器で使われたと思われる演奏方法を「ピリオド奏法」と呼んでいるようです。
定義として正しいかどうかはさておき。
古楽器によって行われた演奏の響きを聴いた時、とても驚きました。
ピッチが低い(435hzとか)というだけでなく、ビブラートがほとんど無い(和声の動きが際立ってくる)とか、楽器の奏法そのものの違い(バロックボウだと元弓で弾いても音が固く鳴りにくいので早い動きでも音が暴れません。
反面、音量が小さかったり、力強い硬めの音は弓の圧力では出せなかったため、速い弓の動きと動かす量でカバーしなくてはいけません。
そういう意味では、音色のバリエーションが少ない、という事にもなりそうです。
あ、専門家ではないので事実誤認があるかもしれませんので、ツッコミ願います。
そうしていく中で、モダン楽器の演奏家の中から「モダンの楽器で古楽器の奏法を使う事で新しい響きを狙う」という動きが出てきました。
指揮者ではジンマン、ラトル、ハーディング、トーマス・ファイ、ド・ベリー・・・そしてアバドなんかもそういう方向に向いています。
同様に、古楽器の指揮者と呼ばれた人たちがどんどんモダンオケを振っています。
アーノンクール、ノリントン、ガーディナー、ホグウッド、ブリュッヘン・・・。
楽譜についてもベーレンライターだけでなく、ブライトコップフでも新しい校訂を出しています。
他にもあるようで、今ベートーヴェンの演奏そのものが見直されているのは確かです。
私自身、ベートーヴェンが好きだという思いもありますし、奏者としてだけでなく、もっと大きな視点でベートーヴェンを勉強したかった、という思いもあってこのプロジェクトを指揮しています。
そして、演奏する側、聴いてくださる側の方々の固定したベートーヴェンのへのイメージを少しでも変える事が出来たなら、とても良い事だなあ、と思っています。
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